AV女優のメンタルの保ち方は…「クソリプMVP」開催!【紗倉まな×神野藍 対談第4回】
紗倉まな×神野藍 【W新刊記念対談】全4回

『犬と厄年』(講談社)を上梓したAV女優兼作家の紗倉まなさんと、『私をほどく AV女優「渡辺まお」回顧録』を上梓した元AV女優で文筆家の神野藍さんの対談を、シリーズでお届けしている。
第1回でAVの現場、第2回で愛犬、第3回で家族を語ったのち、最終回となる第4回は、「書くこと」をテーマに話が広がった。文筆業の核心に迫る話から、“叩き”や“クソリプ”への対処法まで、2人の話は尽きない。
◾️書くことは、究極のオナニーです
神野藍(以下、神野)「この本を書いている時もそうだったんですけど、書くことで知らない自分に出会える、という要素が強くて。“仕事”っていうよりも、“生きること”に近いのかなと思って書いています。自分というものを考えていく時に、私はどっちかというと、書いて発散するというか、書くことでしかわからなかったところが見えるので、切っても切り離せないというか。“営み”に近いのかなと思っています」
紗倉まな(以下、紗倉)「神野さんは、かなり真摯に向き合ってますよね、書くことに対して。妥協を許さない感じというか」
神野「そう、正直に書かないと、っていうのがあって。嘘つきたくないし、大きくも見せたくないし」
紗倉「それはすごく感じました。かなり、これは、書くのもさぞかししんどかろう……と唸ってしまうような、心の隅の隅に潜んでいる感情まで取りこぼさずにしっかり書いてるなぁって思って」
神野「逃げない、っていうところは大事にしたかもしれないです」
(BT編集部「紗倉さんはいかがですか?」)
紗倉「私は、仕事から帰ってきて、犬もいて、温かい家があるものの家も職場みたいなもので、その部分については神野さんが著書で書かれていたことと重なります。家にいても、仕事のことを考えることからは逃れられない。そうなった時の特別な息抜きが、私にはまるでないんですよ。推し活もしないし趣味もないし、涼しい時期に時折キャンプに行く程度……って感じで。そういう意味でも書くことは、自分の不完全燃焼な気持ちを成仏させることができるし、デトックス作用もあるような気がして、唯一の息抜きになっている、というか無理矢理息抜きにしているところがあります。『犬と厄年』で書いたことと重複しちゃうんですけど、私はかなりいろんなことに苛立ちを感じやすくて、ずーっとそのことをぐるぐる考えてしまう癖があって。とはいえ人に話すと、言葉を発した瞬間からもう取り返しがつかなくなるじゃないですか」
神野「すごくわかります。みんな言うじゃないですか、誰かに話すといいよって。嫌なんですよね。さらに自分も苛立ちたくないし、悲しくなりたくないし。だったら自分で抱えてるほうがまだいいなって」
紗倉「そう、しかも話しながら、違う方向に自分の言葉が誘導されていくとか」
神野「もやもやがさらにもやもやになって……」
紗倉「そういう意味でも、他人を巻き込まず自己完結したくて。だからやっぱり、怒りの感情を抱いた時ほど筆も乗る。あと、話すのと違う良さは、その思いを一旦寝かせるという意味で、一旦書いとくだけでもいいわけで。改めて読み返した時に内容が良かったら表にも出すし、記録として取っておくこともできるし。だから究極のオナニーなんですよ。私にとっては」
神野「いいもの書けた時ほど、脳みそ気持ちいいなってなります」
紗倉「何ものにも代えがたいですよね。この言葉が、この想いが、この文章が思いついたんだから立派! もう死んでいい! って気持ちにさせてくれる。でもそれは書くことで小さな成功体験を得てきたからかな。もちろん苦しい思いもあるけれど、究極の快楽でもあるからこそ続けられていると思う」
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【石田健さん×神野藍さん W刊行記念対談】
本屋B&Bにて 8/19(火)19時〜
W刊行記念対談「キャラクターとして生きる」
https://bb250819a.peatix.com
✴︎石田健『カウンターエリート』(文藝春秋)
✴︎神野藍『私をほどく AV女優「渡辺まお」回顧録』(ベストセラーズ)
W刊行記念!令和に誕生した新鋭の論客と文筆家の異色対談です!
✴︎KKベストセラーズ 新刊✴︎
神野藍 著『私をほどく〜 AV女優「渡辺まお」回顧録〜』
絶賛発売中!
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「元エリートAV女優のリアルを綴った
とても貴重な、心強い書き手の登場です!」
作家・鈴木涼美さんも絶賛!衝撃エッセイが誕生
✴︎目次✴︎
はじめに
#1 すべての始まり
#2 脱出
#3 初撮影
#4 女優としてのタイムリミット
#5 精子とアイスクリーム
#6 「ここから早く帰りたい」
#7 東京でのはじまり
#8 私の家族
#9 空虚な幸福
#10 「一生をかけて後悔させてやる」
#11 発作
#12 AV女優になった理由
#13 セックスを売り物にするということ
#14 20万でセックスさせてくれませんか
#15 AV女優の出口は何もない荒野だ
#16 後悔のない人生の作り方
#17 刻まれた傷たち
#18 出演契約書
#19 善意の皮を被った欲の怪物たち
#20 彼女の存在
#21 「かわいそう」のシンボル
#22 私が殺したものたち
#23 28錠1シート
#24 無為
#25 近寄る死の気配
#26 帰りたがっている場所
#27 私との約束
#28 読書について1
#29 読書について2
#30 孤独にならなかった
#31 人生の新陳代謝
#32 「私を忘れて、幸せになるな」
#33 戦闘宣言
#34 「自衛しろ」と言われても
#35 セックスドール
#36 言葉の代わりとなるもの
#37 雪とふるさと
#38 苦痛を換金する
#39 暗い森を歩く
#40 業
#41 四度目の誕生日
#42 私を私たらしめるもの
#43 ここじゃないどこかに行きたかった
#44 進むために止まる
#45 「好きだからしょうがなかったんだ」
#46 欲しいものの正体
#47 あの子は馬鹿だから
#48 言葉を前にして
#49 私をほどく
#50 あの頃の私へ
おわりに